Main Image

キーン・ジャパン合同会社 ジェネラルマネージャー・日本代表 竹田 尚志

2017-01-01

フットウェアを中心としたギアを展開し、アウトドアシーンで絶大な存在感を誇る『KEEN』。その存在感とは裏腹に、誕生からわずか13年という若いブランドでもある。創業モデルである『ニューポート』は、サンダルなのにつま先をしっかりと守るといった、これまでにないコンセプトで大ヒット。アメリカ中の店頭に並んだ。代理店を通じた日本進出はブランド誕生1年後の2004年。2011年に現キーン・ジャパン合同会社を設立し、新たな一歩を踏み出した。そして、2013年からその舵取りを任されているのが、竹田尚志氏だ。巧みなマーケティング戦略により、アウトドアブランドのイメージが強かったKEENに、新たな顧客層を呼び込み、店舗数も増大させた立役者。その成功体験に迫った。

photo_Toyohiro Zenita(OWL),
text_Tsukasa Sasabayashi

ただ良いものを作って売るだけではダメ。社会に貢献してこそ正しいビジネスができる

アメリカ合衆国オレゴン州ポートランドは、美しい自然の景観や温暖な気候、環境への取り組みなどから「全米で最も住みたい街」と称される。また、この街はモノづくりが盛んなことでも有名だ。特に、靴作りではダナー、ナイキといった名だたるシューズブランドが本社を置く。そして、『KEEN』もそのなかのひとつだ。

竹田氏は「ポートランドはアーティストやデザイナー、クラフトマンなど、想像力豊かなクリエイターが多い街。それに、自然が豊かでアウトドアフィールドにも近い環境です。この二つの融合は、KEENが提唱する“ハイブリッド・ライフ”に通じるものがある。そこで、創業から3年目に創業地であるカリフォルニアから本社を移しました」と教えてくれた。「ハイブリッド・ライフ」とはKEENのコンセプトだ。製品やビジネスを通じて解決策を“クリエイト”し、アウトドアシーンをはじめ、屋根のない場所、すべての場所で“プレイ”する。そして互いを気遣い、世界や地球環境を“ケア”するという、「クリエイト」「プレイ」「ケア」という3つの考えから成り立っている。竹田氏は、「クリエイトは仕事、プレイはプライベートでの遊び、ケアは社会貢献と捉えることもできます。人の生活は、この3つのハイブリッド。KEENは、その全てを充実させるお手伝いをしたい」と付け加えた。なかでも、「ケア」の部分が竹田氏とKEENを結びつける接点となった。

竹田氏のキャリアは、アメリカでのコンサルティング業務と日本での小売業再生業務に分けられる。KEENとのつながりは日本時代に生まれた。日本法人の設立を模索していたKEENが、共通の友人を通じて、様々なブランドや小売業の再生・立ち上げを手掛けていた竹田氏を紹介されたことがきっかけだ。「創業者のローリー・ファーストに会ったのは1回。初めて話したときに、引き受けようと決めました」と竹田氏。いったい、なぜ、そこまで思い切った行動が取れたのか。そう尋ねると、竹田氏は2011年9月11日の話を語ってくれた。

「アメリカで同時多発テロが起きたあの日。私はハドソン川を挟んだ自宅で、ワールドトレードセンターが崩壊するのを見ていました。その後は、いてもたってもいられなくなり、ボランティアに参加。目の前に困っている人がいれば、なんでもいいからできることをやって助ける。当たり前のことですよね」

この思いが、ローリー・ファースト氏と通じ合った。KEENが創業して間もない2004年、スマトラ沖地震が発生。ローリー・ファースト氏はその年のマーケティング予算である約1億円を支援に使ったという。竹田氏は「彼は、ただ良いものを作って売るだけではダメだ。社会に貢献してこそ正しいビジネスができる。と語りました。理念はもちろん、実際に行動する力に感銘を受けて引き受けたんです」と振り返る。余談だが、KEENは熊本地震の際、安全靴の提供や、現地でボランティア活動を行っている団体のサポートをいち早く行っている。

強みは周りを巻き込む力。志が同じ人を見つける嗅覚は鋭い

竹田氏が日本法人設立への参加を決めたのは、社会貢献に積極的なことだけが理由ではない。これまで培ったコンサルタントの眼力で「KEENの製品力やデザイン、熱狂的なファンの多さがあれば、日本でもっと売れるはず」と確信した上でのことだ。事実、竹田氏が日本法人の代表になり、KEENは新しいステージへと突入する。

「私が日本法人立ち上げに携わった当時、KEENは主にアウトドアブランドとして認知されていました。アメリカでアウトドア向け製品が好調だったので、日本でも同様のカテゴリーチャネルを中心に販売をしていたんです。しかし、厳密に言えばKEENが目指しているのはアウトドアではなくアウトサイド。屋根がないところ全てで履いて頂きたい」と竹田氏。それは、「アーバンアウトドア」というコンセプトに象徴される。竹田氏は「KEENの特徴は汎用性の高さ」と胸を張る。ハードな山登りからトレッキング、キャンプに耐える性能でありながら、街中でデニムに合わせられるファッション性やビジネスシーンでも履ける落ちつきも持ち合わせる。まさに、屋根のないところ全てで使いたくなる一足を実現しているのだ。そして竹田氏は、これまでアウトドアシーンで培ったKEENのファンを大切にしつつ、新たなる顧客層の獲得に動き出す。その起爆剤となったのが、2014年に販売された『UNEEK』だ。

「靴は、ソール、アッパー、紐の三つのパーツで成り立っています。ソールは立体形成の技術で進化をしているのですが、アッパーは平面の革や布を足の形に縫い合わせているだけ。足は体重を支えるので曲面が多く、複雑な形状をしているのですが、平面素材を使用していたこれまでのアッパーでは、どうしても歪みが生じていた。この複雑な形状を快適に支えるために考えられたのが『UNEEK』なんです。具体的には、平面素材を引き算してしまった。iPhoneがボタンをなくしたのと同じ発想です。引き算をしたアッパー部分は、2本の紐を編み込んで作りました。紐で作ったアッパーは足に密着することで、ピッタリとフィットするんです。サッカーボールやミカンを入れる網を想像してもらえるとわかりやすいかもしれません」

2014年、限定2000足で売り出した『UNEEK』は即座に完売。しかも、アウトドア好きだけではなく、ファッションに敏感な層からの評価が高かったという。

「そこで、2015年からはセレクトショップにも販売チャネルを広げました。また。『UNEEK』に合わせたファッションコーディネートの提案を行うなど、これまでとは異なるアプローチも始めたのです」

人気が確定的になったのは2016年だ。一部のアーリーアダプターに支持されていた『UNEEK』は、さまざまなファッション誌に取り上げられ、爆発的にヒットした。このチャンスを逃すまいと、KEENも店舗を構える原宿キャットストリートのセレクトショップに協力してもらい、ウインドウジャックを決行。街中が『UNEEK』一色に染まった。

「立体的なプロモーションもヒットの要因ですが、なにより製品の完成度が高かった。実は、『UNEEK』のデザイナーは創業者の長男である、ローリー・ファーストJr氏。父はサンダルでありながらつま先をしっかりと守る『ニューポート』で、そして、息子は『UNEEK』で、これまで世の中になかった新しい価値を“クリエイト”したのです」

コンサルタントとして様々な企業にアドバイスを行い、多くの小売業の再生や立ち上げを成し遂げた竹田氏。アメリカでのビジネス経験も豊富で、英語のコミュニケーションスキルにも長けている。この経歴からすれば、現在のKEENの躍進はさもありなんと感じるかもしれない。しかし、竹田氏は自分の本当の強みを「巻き込む力」と分析する。

「私は今でもロックバンドをやっているし、サーフィンなどのアウトドアスポーツも大好き。仲間と一緒に楽しみたいから、すぐに周囲を巻き込んでしまうんです。逆に言えば、自分一人だとなにも出来ない。『UNEEK』のプロモーションでも、ファッションリーダーやアーティスト達を巻き込んで、最後はKEENファンのお客様も巻き込んでしまった。それで言えば、志が同じ人を見つける嗅覚は優れているのかもしれません(笑)」

志が同じという点では、KEENには、ユニークな「アンバサダー」が存在する。アンバサダーといえば、タレントやスポーツ選手、著名人が思い浮かぶが、KEENの場合、必ずしも著名人というわけではなく、Create・Play・Careを実践、特色のある活動をしたりしている人にお願いをしているという。

「条件としては、なにかしらの社会貢献活動をしていて、KEENのフィロソフィーとアンバサダーのライフスタイルが合致していること。熊本地震のボランティアで復興活動を協力していただけた方もいらっしゃいます」と竹田氏。これも、彼の巻き込み力がいかんなく発揮されている一例かもしれない。

竹田氏がKEENと共に歩むようになってから、国内の店舗は6店舗へと増えた。また、3年に1度、新潟県・越後妻有で行われる「大地の芸術祭」や国内最大級のロックフェスティバル「FUJI ROCK FESTIVAL」への協賛など、ファンの裾野を広げる活動も順調だ。

「この勢いで、アジアでの販売も伸ばそうと考えています。キャットストリートの直営店にも、韓国や台湾、中国、タイの方々が、日本限定モデルをお買い求めにいらっしゃいます。東京はアジアのファッションの中心地。ここを拠点として、さまざまな国に発信をしていきたいですね」

まさに日本に、そしてアジアに根付こうとしているKEEN。シーンや場所を選ばず、屋根のない場所全てを快適に歩ける靴は、きっと私たちの生活に自由を与えてくれるはずだ。

Profile
竹田 尚志 Naoji Takeda
1964年大阪府大阪市生まれ。
甲南大学経済学部を卒業し米国ミズーリ州立大学へ留学。
1992年米国サウスカロライナ州立大学へ留学、MIBS(国際経営学修士)を取得。
同年米国アーサーアンダーセン ニューヨーク事務所へ入社。
米国の上場企業の監査や買収案件及びコンサルティングに従事。
2003年株式会社キアコン設立に参画、ディレクターに就任。数々の買収案件の陣頭指揮をとる。
2005年10月株式会社リヴァンプのパートナーに就任。企業再生や立ち上げに携わり複数社の取締役を歴任。
2013年キーン・フットウェア(現キーン・ジャパン合同会社)の代表取締役ジェネラルマネージャーに就任、現在に至る。
2015年から認定特定非営利活動活動法人みらいの森の理事を務める。
趣味はギターとボーカルを担当するバンド、スノーボード、サーフィン、ウィンドサーフィン、肉料理と多彩。

Company Profile
創業 2011年(平成23年)1月13日
営業拠点 東京本社、大阪営業所/
直営店3店舗(原宿/大阪/湘南平塚)/アウトレット3店舗(札幌/酒々井/佐野)
従業員数 35名
業務内容 KEENブランドのフットウェア、靴下、靴の輸入、販売、宣伝および流通

post image

左/クラシカルなダックブーツにKEENの技術をブレンドさせたヴァルカナイズドブーツ「OAKEN/オーケン」。縫い目をシームテープでふさぎ完全防水とし、ポリエステルに竹炭を配合した独自の素材で保温性や脱臭効果も確保したスタイリッシュな一足。価格12,800円
中央/2本の紐と一枚のソールで構成された次世代のスニーカ「UNEEK/ユニーク」。カラーバリエーションも多く、エレガンスさも備えたオープンエア感覚の履き心地の良いシューズ。価格12,000円
右/KEENの名を一躍世に知らしめた機能的なサンダル「NEWPORT/ニューポート」。つま先が保護されソックスの併用で4シーズン対応できるフレキシブルなソールで、軽く、速乾性にも優れる。価格16,000円

Company Topics

若年層でも気軽に入れる最初の一歩となる保険
KEENは志を共にするパートナー団体と協力し、環境保護活動や社会貢献活動に取り組んでいます。
<災害支援>
2013年に南太平洋で発生した台風30号ヨランダにより甚大な被害を受けたフィリピン・サマール島で被災地支援活動を行いました。キーン・ジャパンは、スタッフ自ら被災地へ足を運び現地のディストリビューターやボランティア団体とともにシューズ30,000足の配布を行いました。
<みらいの森>
「NPOみらいの森」は、児童養護施設で暮らす子どもたちの幸せで実りある成長をサポートする団体です。雄大な自然のもと、生涯に残る体験から自分への自信と仲間への信頼を構築します。KEEN代表の竹田が理事を務めており、イベントの企画や子ども達へシューズを提供するなどのサポートを行っています。
みらいの森:
http://mirai-no-mori.jp/

  • post image
  • post image